三洋電機

MBC-17JH40C

AX仕様の286-10MHz機。 MBC-17Jとして販売され、AX仕様の640×480画面モードをサポートし、そのためにビデオサブシステムやキーボード, BIOSとMS-DOSが拡張されている [1]。 背面のDIP SWで6 MHzも選べる。 前面には5型ベイが3つ並んでいて、IBM 5550を彷彿とさせる。
Sanyo MBC-17JH40C AX back of Sanyo MBC-17JH40C AXのロゴ

マザーボードはISAカードで実装されていて、パッシブなバックプレーンを通して他のボードと接続する。 このマザーボードはSAT200C(X286) 4226974000とシルクされていて、すべての部品は部品面に実装され、ハンダ面の実装部品はない。 CPUはAMD N80L286-10/Sで、FPUはIntel C80287XLが搭載されていた。
Sanyo SAT200C(X286) 4226874000 motherboard

AXの心臓部とも言えるJEGAボードも三洋製。 CECL 5VA, JAT-170, 2EC4B1PB14300などのシルクがある。 このボードもすべての部品が部品面に実装されている。 チップ自体はAXのボードでおなじみのアスキーV6367A, M6226Y, 2× C&T P82C435, P82C436だ。 VRAMは16× M5M4464AP-10なので512 KB, テキスト画面?は2× M5M5256BP-12で64 KBということになると思う (AXに詳しくないのでツッコミを待ちます)。
Sanyo JAT-170 JEGA Video Adapter

HDDはIDE接続のFujitsu M2611T (40 MBytes)で、ISAボードのIDEインターフェースカード経由で接続されている。 実際のところインターフェースカードではバスバッファ+アドレスデコード位しかすることは無いが。 FDDは5インチのTEAC FD-55GFR (PART NO. 19307351-95)を2機搭載している。 また、AlliedのCentreCOM SIC-AT-ET イーサネットカードを搭載していた。
Sanyo IDE-100 ISA IDE Interface Allied Telesyn CentreCOM SIC-AT-ET 8-bit Ethernet NIC

AXのキーボードは以前捕獲していた。 なぜかJCCのもので、裏側にはXstation KEY BOARDと書いてある。 左上にAXと書いてあるキーがあるのが特徴。 101キーボード+日本語入力制御用のキー、といった構成になっている。 AXのキーボードはAXを販売していた各社から出ていたようだが、どれもロゴ以外は同じものだった模様。 強いクリック感のあるALPSスイッチっぽいキータッチで、打鍵音がやたら大きいので夜中に使うが躊躇われるレベル。 コネクタはDIN5で、電気的にも基本的なスキャンコード的にもPC ATやPS/2互換。 AX キーボードの配列を現行の Windows で使う [bsakatu.net]の方法を利用することで、PS/2キーボードポートがあるマザーボードとの組み合わせでWindows 11でも使えたが、LinuxにはAXに対応するキーマップが無さそう。
AXキーボード (JCC Xstation KEY BOARD) AXキーボードに存在する「AXボタン」

Medicom MC-770-10GT

「レセコン」などと呼ばれているらしい。 元利用者から合法的に譲ってもらった。

三洋メディコムは、1973年に保険医用計算作表機として発表されたのがシリーズの始まりで、これにはビデオ端末は存在せず、キーボードプリンタと磁気カード用記録再生機を搭載し、語長16ビットで命令種14のCPU、RAM 2 KBytes/ROM 3 KBytesを搭載するという年代なりの代物である [2]。 そこからしばらく資料が途絶え、1998年のMC-5000で汎用のUNIXワークステーションを採用するまでは専用のCPU・OS・周辺機器をベースとした独自アーキテクチャにより高効率処理を実現していたらしい [3]。 この機種はまさに独自アーキテクチャのもので、知られざる本当は怖いコンピュータの歴史という感じがする。

表側には蓋の裏にFDD, 電源投入ボタン、更にもう一つ蓋を開けるとトグルスイッチと8連ディップスイッチ、電源断ボタンがある。 裏側にはRS-232Cが2ポート (DB25F), 2×ワークステーションコネクタ (24ピンセントロニクスフルピッチ), 漢字プリンタ、ジャーナルプリンタ、50ピンSCSIとディスプレイ装置コネクタがある。 ここでいうワークステーションはオフコン用語で、端末、みたいな意味で使われている。
Sanyo Medicom MC-770-10GT MC-770-10GT前面 カバー内部 後ろ側

キーボードはディスプレイ装置に接続する。 このキーボードは50音順で、処方とかいう変なボタンがある。
MC-770-10GTのキーボード

内部には2器のIDE HDD (NEC D5S1050A)とFDD (TEAC FD-235GF P/N 19307774-84)がある。 2つのHDDはほぼミラーになっていて、フロントパネルのスイッチで主/副を切り替えられるようになっている。 HDDにはJIS X0201, JIS X0208系のエンコーディングで文字列が記録されている(i.e. EBCDIC系ではなくてASCII系だった)。
HDD and FDD

基板は2階建てで、ここからは資料がないので想像だが、1階部分がメイン、2階部分が画面表示・端末機能のサブシステムが実装されているように見える。 1階部分には72-pin 36-bit 8MBのSIMMがあり、ここだけはバス幅が4-byteに見える。 写真右下のあたりのバスは16-bitだ。 FDCはμPD72069GF, SCSIはSymbios 53C96-2が載っている。 2階部分はターミナル機能で、MC68B09CPやフレームバッファっぽいメモリが載っている。
基板 1階部分 基板2階

表示はAS/400の端末に似た雰囲気の、画面の欄を埋めていく感じのあのインターフェース。 起動画面は何となくUNIX風味のMOUNT /DEV/HD/HD002,/SYS.DIRといった表示が見えるが、まあ多分似せているだけでUNIXではないような気がする(気がするだけかもしれません…) 現在、起動完了後に日付を聞かれ、どう入力しても日付が不正だ、といったエラーが出て先に進めない。 ディップスイッチの4番・5番をONにするとテストモードになり、CGRAMのキャラクタ表示がされ、押されたキーのキーコードが表示される。
MC-770-10GT boot screen MC-770-10GT test screen

こんな感じの [gitlab.com]プログラムでHDD中の文字列を抽出すると、モトローラSフォーマットのHEXファイルやBASIC風味の謎言語のソース等が見られる。 ファイル名は8+3形式みたい。 この辺の文字列がこの機械の正体を表しているのだろうか:

    MC−770,990,9000           
    基本システム マスター MT            
                  Ver 6195    
                              
                  1998.06.16  
                              
     MC−770,990,9000          
      基本システム マスター Ver 6195    
      医事会計   マスター Ver 0674    
                  1998.06.16  
              SILICON SOFTWARE
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MICROTEC RESEARCH.INC.2350 MISSION COLLEGE BLVD,SANTACLARA,CA 95054

この機種について何らかの情報をお持ちでしたら、ご連絡お願いします。

参考文献

  1. 多田実, 三村秀一, 塚越正巳: AX仕様パーソナルコンピュータ<MBC-17J>. 三洋電機技報. Vol.20 No.2 (39). August 1988. pp.3–8.
  2. 斧正巳, 竹中淳, 長谷川龍一, 矢野利一: 保険医用計算作表機 ─メディコム─. 三洋電機技報. Vol.6 No.1. Feb. 1974. pp.3–9.
  3. 高橋祐一, 萬田雅光, 茂木恵美, 小林隆史, 西川洋一郎: 汎用技術を応用した医事用コンピュータ メディコム <MC-5000>. 三洋電機技報. Vol. 30. No.1. May 1998. pp.57–62.